『お手軽な イカの産卵礁の作り方』

 

 

(用意するもの :産卵礁1基分)

 履き潰したビーチサンダル 1足分

    * 出来れば 硬いウレタン系素材のもの。柔らかい素材は水圧に伴う体積減少(浮力低下)が著しいので避けます。

 ロープ 1本 (太さ5〜6?、長さ2.5〜3m)

    * 経験上 一定期間以上海水に浸かっていた、或いは フジツボが付いていたロープ、また ナイロンロープよりは天然素材に質感が近いクレモナロープの方が イカに好まれる様です。

 土嚢袋 1枚

    * 袋が 擦れて破れる虞のある場所への設置に際しては、これに見合った錘となるものを用意します。

 

(フロートを作る)

1 ビーチサンダル1足をそれぞれ二等分します。(計4片)

2 それぞれの中央にロープを通すための穴を開けます。

3 ロープの一端に二等分したビーチサンダル(計4片)を固定します。

    * 縛る、アイスプライス、何れでも結構です。

(設置する)

4 所定の位置において、土嚢袋に 周辺にある砂を入れて口を閉します。

5 土嚢袋に 先に作ったフロート付きロープを固定します。

 

(産卵を観察する際の注意点)

 ☆楔(くさび)形陣形で陸側から接近すること。

    * 並んだボーリングのピンの様に。刺激を最小限に抑えるためです。

    * 中層浮遊は厳禁です。イカを刺激してしまいます。

    * 当初の接近は3m以遠とすること。先ずは様子見です。状況によって 距離を詰めます。

 ☆観察中は必ず イカの退路を確保しておくこと。

    * イカにとっての退路は沖側です。この方向からの接近は イカに警戒心を与えてしまいます。

    * 産卵礁を取り囲むことのない様、注意して下さい。

 ☆最接近する際はひとりずつ移動すること。

    * イカの『顔色』を伺いながら、序々ににじり寄ります。間近まで接近できたら(卵が上部に付いている場合は)慎重に立ち上がってみるのもよいでしょう。

    * 1人が接近できたら、同様の方法で後に続きます。出来るだけ密集します。

    * 上記☆も併せて遵守します。

 

☆ このフロート型産卵礁の設置に最も適した場所は、イカに聞いてみないと分かりません。そこで 岩場、砂地、その境 等と異なった環境にそれぞれ複数基ずつ設置して観察してみましたが、岩場からやや離れた砂地での定着率が断トツでした。

    * 多いものでは1基につき、バレーボール大の卵の塊が3個付きました。

  しかし その地点での複数基の中でも それぞれが僅か4〜5mしか離れていないにもかかわらず、卵が大量に産み付けられるものと そうでないものがあり、その定着状況はまちまちでした。この違いについては、今だ不明です。

    * これは ある水域における結果であり、全ての水域において同様の結果が得られるとは限りません。これらは あくまでも 参考資料と考え、各水域での設置に際しては、独自に調査・観察することをお勧めします。

 

  イカの産卵礁というと、鉄骨を櫓状に組んだものや 葉の茂った竹や橡(くぬぎ)に重石を付けたものを沈める 等を想像しますが、実際はそれ程 大掛かりなものでなくとも十分な効果が得られます。

    * 砂地に大掛かりな構造物を設置した場合、自重により埋没 或いは うねりの影響を受けて破損・移動してしまいます。

  ダイバーが気軽に潜れる水深において、イカの産卵に適した対象物は極めて少ないのです。通常 イカが 卵を産み付ける所といえは、小さな洞窟や重なり合った岩のその裏面(天井部分)、ヤギ類 等ですが、これらは既に他の生物や卵に害を成す生物の棲み処・縄張りである可能性が高く、また その様な場所・対象物の数は非常に少ない。特にヤギ類は、水深20m以浅ではうねりの影響を受け易いので、個体数もその大きさも イカの産卵に対応できるものではありません。

  要は 他の生物からの干渉が少なく、かつ 卵が海底(岩や砂)と接触しない環境であれば、イカにとっては都合の良い産卵場所になる と考えます。

    * 実際 コロタから離れた砂地に杭を打ち込み、それを柱として水底から30?の所に横木を固定(鳥居の様に)しただけのものでも 卵は付きました。

 

☆ 当然のことながら、産卵礁の設置には 漁協やダイビングポイントの管理者からの許可が不可欠です。無用のトラブルを招かない様、ご注意下さい。

    * 各ダイビングポイントもこんな参加型の企画をもっと立ち上げて集客し、日々卵の定着状況をメール(写真添付)で送って再来を促す。加えて 砂地の利用が図れてダイビングポイントとしての価値も上がる、なんてね。各ショップだって、ダイビングポイントとコラボすれば‥。でも無理かなぁ。海中のガイドラインに工事現場用黄黒ロープ(夢がないねぇ)を使っている内は。もっとも その管理も出来ていない様だし‥。

 

 

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