『ダコー(ディコール) ペーサー DACOR PACER』

 

 

DACOR

  1954年からレギュレーターを製造・販売。Scuba diving 創成期のアメリカで、当時あった5つの器材メーカーのひとつ。

     * U.S. Divers (現在は Aqualung America の軽器材部門。Aqualung :クストー型SCUBA、商標名)、Healthways (1963年に経営破綻、後継会社がScuba pro)、Volt (もとはスポーツ用品メーカー)、Swimaster (もとは応需式潜水器やドライスーツ、フィン のメーカー、現社名:Spearfisherman)、Dacor。

  日本における販売代理店は、1982年当時がアポロスポーツ。その後 Dacor japanから SAS に移行するも、2011年2月末をもって SAS からの販売を終了。

  現在は Mares と合併している。

 

  久しぶりに、ダコー ヘーサー300 を見た。セカンドステージは フェイスもケーズも金属製で、手に取ると ズシリと時代の重さをも感じる作り。おそらくは 1983年以前のモデル。確か '83年モデルからは、パージボタンに『Totally balanced』の表示が無かった様な‥。

  そう言えば、この頃のレギュレーターの中には 『渋い』ものが多かった。『渋い』とは、吸気抵抗が大きいことを意味する。『意識しないと 深呼吸が出来ないのがレギュレーター』なんていうのが珍しくなかった。初心者やブランクダイバーが1ダイブ終えると、『横隔膜が筋肉痛』と真顔で呟く程に‥。今回の依頼主も その『渋さ』が『如何にも潜っている』と実感できるので、お気に入りだったとのこと。

  当初は フリーフロー修理の依頼であった。しかし、以前 他のショップで「部品が無い」と断られ、そのまま何年も放置されていたので、塩が固着して デマンドレバーが満足に動かない。結局 オーバーホール扱いとなった。

 

  この当時のレギュレーターは 構造が至ってシンプル、これが良い。以前から各メーカーは 色々なネーミングで新機構を打ち出すのだが、その効果の程が伝わってこない。もっとも クストー型SCUBAは その発明当初から完成度が高く、今更 改良や付加すべきところなど そうあるものではなかった。だが 器材メーカーにとって 現状維持では、販売に際して 他社との差別化が図れない。まさにジレンマだ。

  改良・付加するには、当然 経費かかかる。そして費用対効果で行き詰まると 飾りを付けたり、表面処理を施したり、チタンで作ってみたり、また セカンドステージのフェイスのデザインだけを変更したり、と実に涙ぐましい。

  久しぶりに ダコー ペーサーを見て、そう強く感じた。

 

  依頼者が かつてお気に入りだったとは言え、こんな『渋い』レギュレーターを基本調整のまま送り出したら、久しぶりに味わうその『渋さ』に戸惑うであろうと思い、少し軽めに調整して送り出した。まだまだ 現役。

 

 

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            scuba@piston-diaphragm.com