『枯れ木の賑わい  弐』

 

 

 『普段なら気にも留めないもの、つまらないものでも、それなりに数が揃えば価値あるものになる』の例えと、つい最近までそう思っていた。正しくは「枯れ木も山の賑わい」で、その意味も「無いよりはまし」。二重の大間違いだ。

  しかし海では、そんな光景を時々目にすることがある。

 

  ビーチダイビングは概ね 漁港の周辺で行われる。防波堤の外側には、テトラポットが積み上げられている。大きなもので1個 約32トン。高さ約3.5m、一辺の長さが約4.0mの正三角錐に相当する。これ程の造形物を重ね合わせると、その隙間もダイバーが通り抜けられる位で、そこには ヨスジイシモチやハタンポの類 といった、見慣れた地味な魚が群れを成している。

  ダイバーが近づくと 普段なら奥に隠れてしまう彼らも、大きなうねりが寄せる日ともなれば 内部の流速は一気に増すので、群れは全て 屋外退去となる。

 

  勿論 ただ遠くから眺めるだけでは面白くない。相手には逃げ場が無いのだから、群れにより近づけるチャンス。これは 水族館では絶対に体感できない、ダイビングならではの 楽しみ方のひとつ。だが うねりの程度によっては テトラポットに叩きつけられたり、隙間に吸い込まれる虞もある。

  うねりは 大きなものが3回続けて来た後に、比較的小さいものが4回来る。このタイミングを計りながらも、時には うねりに背を向ける形となる場合もあるので、うねりを体感しながら 群れとテトラポットとの微妙な間合いを取る。そして 危険回避に欠かせない 急速反転離脱する術・泳力も必修科目となる。

    * あくまでも 安全第一を心掛け、他のダイバーと競うことのない様に。実力に見合った楽しみ方を。勇気を持って「参加しない」ことも、立派な判断。

  やらなきゃ出来ない。試して、体で覚える。これが修得への一本道。

 

  比較的浅い水域であること、視界の全てを魚で満たすことも出来るので、(耳の抜け難い)体験ダイバーや初心者ファンダイバーには、至って好評な出し物のひとつ。

    * 当然の事ながら BCDアームホールに掴まらせて、こちらも必要に応じて 相手BCDを保持し、安全を確保する。

 

  これらを前説とし、ヨスジイシモチの群れだけで、1ダイブが ☆☆☆ になることもある。

  

 

 

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