『続・トビエイと遊ぶ (実例編)』
実例 1
1バディ2名×2を率いてのボートダイビング。ブリーフィングにおいて 「トビエイと遊ぶ」を説明し、リーダー(私)の両翼に各バディのフォーメーションとした。
ライン潜降、水深10mからは フォーメーションによるフリー潜降に移行し、中層からトビエイを探す。やがて ゴロタと砂地の境目、岩陰にトビエイを視認。
* 岩は、トビエイから見て2時の方向にある。
2バディに合図を送り、隊列を崩しつつ砂地に急降下して、トビエイから見て11時の方向から、超低層遊泳で 一気に間合いを詰めた。各バディは リーダーの両翼、やや後に下がる形で着底した。
* 先ずは様子見、のちに各自は トビエイを芯とした扇状の位置に修正移動。
暫し睨めっこが続いた。痺れを切らしたトビエイは、強制離陸を試みようと鰭先を、更に頭を持ち上げた。私は そうはさせまいと、中性浮力のストッピング姿勢をとり、更に両腕を広げて大きく牽制。双方このまま膠着状態が続く。
すると 何を思ったか、最右翼の女性ダイバーが、トビエイににじり寄り始めた。トビエイもその動きに気付いた様だが、牽制されているので 容易に動けない。彼女は 私とトビエイ双方の様子を伺いながら、尚も接近を図る。そして終に トビエイに手か届く距離まで近づくと、やにわに右腕を伸ばしたかと思ったら、掌を上にして、持ち上がっているトビエイの鰭の下に 僅かに忍ばせた。
何と大胆なことをするのだ。彼女の思惑が読めた。
進退窮まったトビエイは 覚悟を決めたのか、持ち上げていた頭を下げ、鰭も降ろしていった。そして鰭が 僅かに忍ばせていた彼女の掌の上に載った次の瞬間、彼女はトビエイの鰭を摘んだ。体をビクつかせて驚くトビエイ。しかし 大きく牽制されているので、それ以上動けず 成すがまま。「イヤー、やめて〜」そんなトビエイの声が聞こえて来そうだ。
予想していた行動とはいえ、彼女の あまりの大胆さに ただただ呆れるばかり。しかし、お見事!
暫くすると満足したのか、彼女はトビエイの鰭を手放した。安堵したのか、疲労困憊したのか、トビエイは今までに見たことの無い様な表情をしていた。(少なくとも 私にはそう見えた)
エキジット後に尋ねると、「四指の上に鰭を載せてきたのはトビエイの方。私はそこに拇指を添えて摘んだだけ。」と嘯く。これってセクハラ?! でも トビエイがメスなら無罪?! じゃあ、パワハラ?!
何れにしても、トビエイとそれを牽制する私 双方をよく観察し、動きを読み切った彼女にしか成しえなかったこと。
実例 2
対峙し牽制するも、トビエイは離陸進路を確保しようと 鰭を上げてその場回頭を始めた。こちらもその動きに呼応して、素早くトビエイの正面に移動、牽制する。
* トビエイを中心とした円周運動。
そして終にトビエイはゴロタに向かって離陸を開始した。未だ微速なので、まだ トビエイの正面を陣取ることは出来る。しかし それもトビエイがこまめに回頭し、速度を上げれば 限界となり、トビエイとの並列遊泳に移行した。
* この間もトビエイとの間合いは、決して詰めてはならない。
* 並列時は、自身が余裕を持って泳げる速度であること。
並列遊泳から体半分 前に出る。そして トビエイとの間合いを注意しながら、体トビエイに寄せることで その進路を牽制して、直径約20mの円周軌道に誘導した。
* 球技のディフェンスの様な動き。
* トビエイの動きに注意を払いながらも、自身とチームの現在位置を確認する。
円周運動中 トビエイは、ずっとこちらを睨んでいる。
何とかチームのいる元の場所に誘導出来そうだ。前方にはチーム一番の初心者(女性)がいる。もしこのまま行けば、トビエイと彼女は「衝突」するかも。
トビエイへの牽制を緩め、間合いを徐々に開けて行く。トビエイは直進し始めたが、全神経は 相変わらずこちらに向けたままなので、前方にいる彼女に気付いていない様子。彼女は トビエイが自分に向かって来ると悟り、呼吸を止め 身を屈めた。頭上をやり過ごす心算? トビエイは 尚も彼女に向かって直進。その時、何を思ったのか 彼女が右腕を揚げた。トビエイの進路と交錯する。そうとは知らず、トビエイは尚も直進。注意はこちらに向けたまま。そして 彼女の右腕に衝突★★
一瞬 体を波打たせたトビエイは、我が身に何が起きたのか理解出来ない風で沖に向かってヨロヨロと泳いで行った。
後にその彼女に 右腕を揚げた訳を尋ねたが、「ただ何となく、まさか当たるとは思わなかった」と。
実におそろしきは、女性ダイバーかな。
例え牽制することが出来なくとも、誰かがやっている時に それを利用して自分なりに楽しむことも 『トビエイと遊ぶ』こと。しかし それは、気心の知れたバディやチームでなければ、なかなか出来ないこと。
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