『ホースレス残圧計一体型ダイブコンピューター』

 

 

  1993年1月、アメリカ・フロリダ州オーランド、オレンジカウンティー・コンベンションセンターにおいて DEMA(Diving Equipment and Marketing Association) Show が開催された。

  初日、何百と並ぶ出店ブースの小さな一画には、黒山の人だかり。名も知れぬ小さな器材メーカーが、ホースレス・タイプの残圧計一体型ダイブコンヒューターを商品化していた。

    * 当日は 某大手器材メーカーが同様のダイコンを参考出品していたが、急遽撤収した。その広いブースの中央、周囲より一段高くなったステージの真ん中には、空っぽのショーケースだけが取り残されていた。

  このダイコンは レギュレーター・ファーストステージのHP(高圧)ポートにトランスミッター(発信機)を取り付け、手首に装着したディスプレー(受信機)に タンク残圧を表示する。担当者によると、近いうちに『リーダー仕様』も発売するとのこと。これは、同機を装着したメンバーのタンク残圧を リーダーのディスプレーに表示できる機能だとか‥。

 

  その一ヵ月後。知人が 「モニターして レポートを出して!」と 現物を持って来た。その時の主な報告内容は‥、

 1. (ゲージコンソールが無いので) エアチェックのサインは どうする?

 2. ファーストステージ右側HPポートにトランスミッターを取り付け、左手首にディスプレーを装着した場合は、著しく受信が不安定。(体が遮蔽物になっている)

    * 左[右]手首にディスプレーを装着する際は 左[右]側HPポートにトランスミッター取付、を推奨。

    * 自身のタンク残圧すら的確に表示できない現状では、前出の『リーダー仕様』の実現は 夢のまた夢。

 3. (ゲージコンソールが無いので、コンパスは手首装着となるのだが) コンパスとディスプレーを並列装着すると、ディスプレーが発する磁界(おそらく内臓電池によるもの)により、コンパスに +30°の誤差が生じる。

    * コンパスとディスプレーは 左右手首にそれぞれ装着、を推奨。

 

  何こんな昔話を持ち出したかといえば、先日 某メーカーの同じ様なダイコン・トランスミッターの取り付けを頼まれたのだが、「既存のアナログ残圧計もそのまま付けておいて」とと‥。

  聞けば 「電池切れの際のバックアップに必要。そして 受信が不安定だから 」と店員に残留を勧められたようだ。

  このタイプのダイコンで バッテリー残量警告を無視して使い続けた場合、タンク残圧表示を最後まで温存するために、それ以外の表示を先にシャットダウンするのが 一般的。

    * 減圧症で死ぬリスクよりも エア切れで死ぬリスクの方が遥かに高いから。

  世に出て既に20年経ったこのシステム。未だに受信障害が解消されず、バックアップを推奨する。そんなクズ器材(既に購入した人には失礼!)を平然と販売している器材メーカーやショップ、店員達に、最早 明日はない。

 

 

ご意見・ご質問等ございましたら、下記アドレスまでお送り下さい。

            scuba@piston-diaphragm.com