『ブランチハンガー、改良型クイックリリースバックル』

 

 

 5月29日(日曜日) 雨。季節外れの台風2号に刺激された梅雨前線の影響で 時折 雨が強く降るが、風は殆んど無く 水面は至って穏やか。こんな天候だが、水が温んで来たこともあり 参加者は先月より多く、今日は 冬眠していたバディ Mrs.ホンビノスと久しぶりに潜る。

 

 1本目の潜水目的は、ホンビノス貝の水管撮影と その大型個体の採取。ここお台場では水深2〜3mに多く分布しているので、その周辺域を重点的に潜る。彼女にとっては初めての水中撮影。用意したデジカメは かつてのストレートタイプの携帯電話ほどの大きさでストロボは付いていない。因って 水中ライトを光源とする。長さ約30cmのループホルダーとフックを介してBCDの右胸部に、同じく 貝採取用の熊手と網を 左胸部に連結していた。

 

   バディロープを持ちながら これら携帯物をとっかえひっかえ取扱うのは かなり面倒なことなので、今回はバディロープに『ブランチハンガー』を併用する。これは マグロ延縄(はえなわ)漁やトローリング等の大型魚の捕獲に用いる漁具で、ロープを挟み込んで その位置を確実に保持するのだが、本体を握れば 簡単にロープを外すことが出来る優れ物。但し 比較的握力の弱い女性が取り扱うには握りが硬い[スプリングの張力が強過ぎる]ので、ロープが安易にズレない範囲内で《左図》の様に変形させた。

   バディロープを掛け、ブランチハンガーを矢印の方向に握りながらロープを引くと 一気に固定される。ロープの長さ(バディとの間合い)を変えたい、外したい時は、同じく矢印の方向に握って調整・取り外しを行う。

      * 費用、全長100mm 5個入り ¥900 (プラス 手間)

 

 先ずは ホンビノス貝の水管撮影。ファインダーは1.5インチディスプレーなので、隣りにいても 被写体とその構図が確認できる。これを頼りに ライトの位置・光量を調整した。「もっとカメラを被写体に近付けた方が‥」とも思ったが、既にループホルダーはBCDに固定されており、スムーズには外せない。これは改善の余地あり。

 

   かつての 36枚しか撮れなかったフィルムカメラに比べ、デジカメは ほぼ無制限。構図、遠近、角度、光量を変えながら ひとつの被写体につき、最低でも10枚は撮って欲しい。「静物」ならば 尚のこと。

 

 続いて ホンビノス貝の大型個体採取だが、思いの他 見つからない。かといって やたらと掘り返したら ヘドロを大量に巻き上げ、他のダイバーの迷惑となる。ナイフをヘドロに突き刺して それを手掛りに所々を掘り返し、何とか数を揃えた。それにしても個体がやや小ぶりなのが不満。

 

   巾着タイプの採取網をBCDと連結するには、ある種の工夫が必要。何も入っていない時は吹き流し状態で問題はないが、いざ採取すると 網は下に垂れ下がり、そのまま低層遊泳をすれば 網は水底を引き摺られて行く。特にお台場ではヘドロを撒き上げ、他のダイバーへの大迷惑となる。

   そこで‥、

      * 網は正方形(立方体)

      * フックやD環、クイックリリースバックルを 網に直接複数個取り付ける

      * ループは短めにし、ストッパーを取り付ける (←採取物の落下防止)

   等により 網をコンパクトにまとめ、手に持つ 或いはBCDに装着する際の垂れ下がりを抑えて 引き摺りを予防する。

      * 陸上(直立姿勢)での所作・感覚は、そのまま水中には当て嵌まらない。水中環境に応じた工夫を講ずることが ダイビングの安全に寄与し、目的達成の手助けとなる。

 

 2本目は、久しぶりに 船の科学館側で潜る。正しくは青海北埠頭公園内でのダイビング。船の科学館の施設を利用してのエントリー・エキジットなので、先の地震で被災して 休館・閉鎖されていたが、漸く改修を終えた。

《写真・上》

  手前がエントリー・エキジット用ポンツーン。向こう側 オレンジ色の船体は、南極観測船「宗谷」。その後ろ 展望台および船の形をした白い建物が、船の科学館。

《写真・下》

  船の科学館展望台から見た 青海北埠頭公園の一角、ダイビングポイント全景。右上に青函連絡船「羊蹄丸」、その船尾にポンツーン。

 

 今回の潜水目的は、ホンビノス貝の採取。この水域では、南極観測船『宗谷』の連絡歩道橋下《写真・下、左中央部》まで行かないとホンビノス貝はいない。その距離、エントリーポイント(羊蹄丸船尾 ポンツーン)から およそ100m。

 濁った水中を長く移動させたくなかったので、エントリー後 仰向けで少し水面遊泳。進行方向(移動方位)は周辺の景観を自身の正面におくことでコントロールさせた。

    * 彼女は コンパスを持っていない。

 潜降してみると、水深2m以深は水が澄んでいた。今日は、トップ3に入る程の透視度。小魚も数多く、イッカククモガニも頻繁に目にする。前方に微かに動く物体発見。甲幅7cm程のイジガニだった。「是非 観察用に‥」と素早く捕獲するも、両のハサミで拇指をおもいっきり挟まれた。

 Mrs.ホンビノスが持参した採取網に獲物を収めたのだが、これが熊手と結び付けられていて どうにも不便。改良の余地あり。

 

   撮った写真は やはり被写体が小さい(距離が遠過ぎた)。そしてデジカメは人間の眼より高性能なので、水の濁りまでも鮮明に写し出してしまうし、光量過多。もっと腕を伸ばして 被写体との距離を詰めて欲しいのだがが‥。

   多くのダイバーは 携帯物をフックやナス環を使ってBCDのD環に連結している。しかしこれが意外と簡単に外せない。そこで《左図》の様なものを作ってみた。

   クイックリリースバックルのプラグ側の一部を円筒状に切削し、そこに ピッチング(縦振り)タイプのベルトフックを取り付けた。これを介して携帯物をBCDと連結すれば、何時でも簡単片手で着脱できる。

      * 費用は ベルト幅25mmタイプで フック ¥80〜、バックル ¥140〜、(プラス 工具、手間)

 

 Mrs.ホンビノスは 必ずダーリン同伴で参加する。ダーリンはダイバーではないので、いつも陸上待機組。網から取り出したイシガニを前にして 「今晩の味噌汁の具に‥」 「味噌汁なんて作らないだろ‥」 なんて会話を耳にしたが、その後 イジガニがどうなったのかは 定かではない。

    * 食べるのも研究の一環? カニと人間、双方に合掌。

 

 次回のダイビングでは、『リーダー Mrs.ホンビノスによるナビゲーション実践』を予定しております。乞うご期待。

 

 

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