1. ブルトン管式エアモニター(残圧計)の仕組みは?

 

  左の写真は、ブルトン管式圧力計の内部構造を示すものです。

    (右上 : 表示板) (右下・左下 : 帯状プルトン管)

    (左上 : パイプ状ブルトン管 & 指針用継手・歯車)

【構造と原理】

  圧力を検知するブルドン菅は 片端を塞いで円く曲げられたパイプで、開いている側の端は 高圧ホースを介してファーストステージ高圧室(=タンク内圧)に繋がっています。

  ブルトン管内の圧力が上がると 本体の「曲がり形状」が伸び、圧力が下がると元の形状に戻ります(左図 黄色矢印)。この動きは、継手や歯車を介して指針に伝達されます。指針は 一端が回転軸と繋がっているので、ブルトン管の変形、即ち圧力に応じて先が回転します。表示板にはその回転の度合いが読み取れるように目盛りが刻んであります。

 

 

2. エアモニター(残圧計)は故障しないの?

 

  故障する(指針が動かなくなる)ことは、極稀にあります(過去に二度 見たことがあります)。但し 兆候があるので、それを見逃さないことです。

【管理】(アナログ表示のエアモニター)

 1. 器材セッティング後のエアチェック(レギュレーター、BCDパワーインフレーターの作動確認)を完了したら タンクバルブを全閉します。

 2. エアモニターを手に取り、セカンドステージ・パージボタンを僅かに押し続けることで レギュレーター内の残圧を一定少量ずつ、表示目盛がゼロになるまで排出し続けます。

    * BCDパワーインフレーター・送気ボタンを使っても結構です。

  この時、エアモニターの指針がスムーズに動く[降下する]事を確認します。

  指針がスムーズに動かない[降下しない]場合は ダイビング中に指針が停止、または 正しく表示しない虞があるので、即座に使用を中止・交換して下さい。

 

 

3. 0〜50barの表示が4等分(10bar分目盛りが足らない)エアモニターがあるのは何故?

 

  SCUBAでは タンク圧をファーストステージで『規定値(10bar程度)+周囲圧』に減圧し、これを再びセカンドステージで周囲圧に減圧して ダイバーが必要とする量を供給しています。

  タンク圧が『規定値(10気圧程度)+周囲圧』を下回れば、SCUBAはダイバーが必要とする量の空気を供給できない、つまり これ以上ダイビングを続けるべきではないという注意喚起を込めて 10bar以下を表示していません。

 

 

4. どの程度正確に表示するの? 長い間使って 誤差は生じないの?

 

  ブルトン管式圧力計の表示精度は その圧力スパン〈a〉と大きさ(本体直径)に応じた精度等級〈b〉によって決まります。

    * a :表示されている最大圧力と最小圧力との差。

    * b :0.8から4.0までの間で 5段階の等級に分かれていて、その値の小さいもの程 許容差が小さい(精度が高い)ことを意味します。

  例えば 『直径60ミリ以下、圧力スパンが300bar』のブルトン管式圧力計の精度等級は 概ね 1.6級で、この場合表示 0〜30barと270〜300barの間で ±7.2bar、表示30〜270barの間で ±4.8barが許容範囲となります。

    * 圧力スパンが大きくなると、精度の許容範囲も大きくなります。

 

  圧力計の使用に際しては、「本体の振動を防ぐ処置を講ずる」「表示板を垂直に保つ」等の注意点がありますが、ダイバーがこれを強要することは出来ませんので、固定式圧力計よりも誤差が生じる可能性は高まります。しかし ダイビングには『残圧の下1桁は切り捨て(psi表示は下2桁)』というルールがあり、生じる誤差は その許容範囲内と言えるので、エアモニター(残圧計)の精度を問題視する必要は無いと考えます。

  寧ろ エアモニター[ケージコンソール]の取扱に注意し、衝撃等に伴う誤差が生じない様に心掛けることが大切ではないでしょうか。

 

    * 多くのダイバーはエントリー前、タンク残圧の「多い少ない」を気にしますが、それはタンクに空気を充填した時の状況(残圧、気温)や保管状況(気温、日照)により 大きく異なるものです。タンクに刻印されている充填圧を著しく下回る場合を除けば、さして気にする必要はありません。

 

 

5. エアモニター(残圧計)の最大目盛りに 250〜400barと種類があるのは?

 

  ブルトン管式圧力計を選択する際には 「運転圧力が目盛の中間部(30〜65%)になる様に選ぶ」との注意事項があります。

    * 最大および最小圧力付近の精度誤差は、中心付近に比べて大きい。

  これは圧力計の精度を維持するためのもので、例えば 最大300bar表示の圧力計ならば、その運転圧力は90〜210bar、つまり 200bar充填タンクに対応できる圧力計と言えます。また 適当な常用圧力範囲として ダイビングの様な変動圧力における使用最高限界は、最大圧力の2/3以下とJIS規定されています。

    * 仮に 最大圧力が300bar表示の圧力計ならば、常用最大圧力はその2/3にあたる200bar以下となります。

  近年 250bar充填タンクの導入に伴い、それに対応すべく最大350〜400bar表示の圧力計が出回っています。

    * 最大表示250barの圧力計は、かつてタンク充填圧力が150barだった頃のものです。

 

 

6. 新しいタンクの圧力表示(刻印)はパスカル表示なのに、今 販売されているエアモニター(残圧計)が気圧表示のままなのは何故?

 

  Pa(パスカル)等の国際単位(International System of Unit、略称 SI単位)は、科学技術全般を含む社会一般で 共通に矛盾無く使えることを目的として、1960年に国際度量衡総会で採用が決議された一貫した単位系です。国内では JISにおいて1974年から徐々に転換が進められ、1987年には SIを全面的に採用するため計量法の改正が行われ、翌1988年から施行されました。これに応じて各方面、例えはダイビングにおいては タンクへの高圧空気充填等に係わる 高圧ガス保安法が1988年に施行されました。

  これにより 取引や許認可、証明、検査 等に関する表記には、SI単位を用いることが義務付けられました。

    * タンクの表示(刻印)は これに該当します。

    * 平たく言えば 「役所絡みの数字には SI単位を使え」と言うことです。

  しかし 一般的に使われている計器本体については 交換に伴う費用負担や社会通念 等を考慮して、その数値をSI単位に換算して提出書類に記載すればよいこととなり、従来通りの使用が認められております。

 

 

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            scuba@piston-diaphragm.com