『文字のサイズ(中)』でご覧下さい

 

 

  はっきり言って 競技会に出るのでなけれは、「本人の思い入れ(嗜好)」で選べばいいと考えます。フィンの持つ能力を100%引き出して泳いでいる人など皆無です。誰かとタイムを競い合うのでなければ、経済状況が許す限り 本人の好きな「色、デザイン、メーカー」のフィンを使うことが、例え遊泳スピードが遅くとも 本人にとって一番楽しいことだと考えます。

  しかしこれでは 答えになりそうもないので、以下のことに留意して選んでみては如何でしょうか

 

  まずは お手元に「団扇(うちわ)」をご用意下さい。フィンの各部分の機能を団扇に置き換えて説明致します。

  多くの方は プラスティック製《団扇A》をお持ちと思います。《団扇A》に示すリブブレードよりも太く(または硬く)、一定の強度を持っていることは触って(または振って)みると分かります。このリブの強度(硬さ)により 団扇を振ると全体が大きく撓り、効率良く空気が送り出されるので 涼を得ることが出来ます。

    * 竹製《団扇B》は 素材の持つ「軽さ」と「撓り」により、プラスティック製《団扇A》よりも効率良く空気を送り出すことが出来ます。

  それに対して 『しっかりとしたリブの無い』《団扇C》は 撓りが少なく、時に取っ手の付け根から「くの字」に折れ曲がってしまうので、《団扇AB》に比べ 空気の送り出しに劣る場合があります。

  つまり フィン全体には、?一定の『軽さ』 ?水の抵抗に対する『強度(硬さ)』 即ち 『放物線を描く様な撓り』が、また フィンの各部部については 『リブ《フィンB》は硬く』『ブレード《フィンA》はやや硬く』、そして フルフット・フィンでは『フットポケット《フィンC》は柔らく』といった 機能に応じた『強度(硬さ)』が求められます。

    * GULL Warp(ワープ)、MEW(ミュー) 等。

    * 機能に応じた強度(硬さ)を実現する方法は2つ。

       a 硬さの異なる同系素材(合成ゴム)を 各部分の機能に応じて 配置・成型する(GULLワープ、古くはCressi-Subロンディン)。

       b 硬さの異なる異系素材(合成ゴム、プラスティック、カーボン 等)を 各部分の機能に応じて 配置・一体成型する。

    * 時に 重くて、ゴツくて(厳しくて)、不恰好なフィンが店頭に並んでいることがあります。それは、単一素材(1種類の硬さの合成ゴム)で成型されているからです。単一素材でリブ《フィンB》の強度(硬さ)を確保するには、量を増やす(分厚く作る)以外に方法がありません。単一素材で成型すると コストが抑えられ、その分 利益が得られます。

        + この様なフィンは 当然フットポケット《フィンC》も硬めとなるので、使い難いものです。

 

  フィンの選択は、『フィンスイミング』を『変速機付きの自転車で緩やかな坂道を登る』事に置き換えて説明致します。『自転車=遊泳フォーム』『勾配=水の抵抗』『変速機=フィンの推進力(俗に「フィンの硬さ」と言います)』に相当します。

    「タイヤの空気圧は?」 「ハンドルは曲がっていないか?」 「サドルの高さは適切か?」等々、走行に適した状態 = ある一定の水準まて達している(完成されている)遊泳フォーム。

 《登坂に際して‥》

   脚への負担は大きいがスピードの出せる変則歯車(硬すぎるフィン)を選択した場合、それに見合った脚力[筋力、運動能力]が本人に備わっていなければ、途中で失速して坂道を登りきることは出来ません(息切れ、疲れる、脚が攣る)。

     * フィンスイミングには 自転車の「立ち漕ぎ」の様な「登坂するための奥の手」はありません。

   これとは逆に スピードの出ない変速歯車(柔らか過ぎるフィン)を選択した場合は、確かに十分な脚力[筋力、運動能力]が無い人でも 脚に負担をかけずに登坂出来ますが、脚を動かす(運動量の)割りに前に進みません。

 

  SCUBAダイビングはスノーケリングに比べ 数多くの器材を装着している分、水の抵抗が増えます。また 限りある空気の消費を抑えるために ゆったり大きなストロークで泳ぐことが求められます。

  ボートダイビングでお馴染みのバックロールエントリー、その動きとは 『後方半回転、前方半回転』です。これを可能にしているのが、エントリー時にフィンが受ける水の抵抗です。柔らか過ぎる等 水を十分に抱え込めないフィンは 不向きです。

    * 仮に 正しい姿勢でバックロールを行おうとも フィンの選択を誤れば、結果『後方半回転、前方半回転』は失敗します。

    * (他のエントリー方法も含めて) BCDの着用により 水面での浮力が確保された現在でも、エントリー時に フィンが受ける水の抵抗(深く沈むことを防ぐ)は欠かせません。

  これらの理由から SCUBAダイビングには、スノーケリングのそれよりもやや硬めの[水を多く放出できる]フィンをお勧めします。

    * かつてフリーダイビングにロングブレードフィンが用いられたのも 同じ理由からです (現在はモノフィンが主流ですが‥)。 大きくゆったりとした泳ぎ方で、心拍数の上昇[酸素の消費]を抑えています。

 

(フルフット・フィンに関して‥)

  フルフット・フィンを紹介している水中写真・映像では、ブーツを履かない 素足での着用が多く見受けられます。脚を長く、全体として美しく見せるためです(実際そう見えます)。「自分もそうしたい」とお思いの方もいらっしゃいますが、お勧めはしません。エントリー前(入水前)の陸上や船上が 常に素足で歩ける状態にあるとは限りませんし、万が一 怪我でもすれば、エントリーは中止せざるを得ません。それに 水に入ってふやけた素足は、「靴擦れ」になるリスクが高いのです。素足着用は、プールの様な好条件に限定されます。

 

(ストラップ・フィンに関して‥)

  近年は ストラップの長さを手軽に調整できる機能の付いたクイックリリースバックルが多くの器種に採用されていますが、中には扱い難くて役に立たないものもあります。購入時には 実際に履き脱ぎする姿勢に近い、例えば「椅子に腰掛ける」「片足立ちになる」等して、その使い易さをチェックしましょう。

    * フィンの履き脱ぎ方法については、末記参照。

    * 普段グローブをお使いの方は、着けてお試しを。

    * ネット購入される際には 近隣の大型ダイビングショップ等で、同器種の取り扱い易さをチェックすると良いでしょう。

 

  脚力[筋力、運動能力]を強化する間も無く 短・中距離のタイムトライアルに参加される場合は それとは逆に、脚に負担の少ないやや柔らか目のフィンを履き、「足の振り幅を小さく、数多く脚を振る」泳ぎ方をお勧めします。

 

  月並みですが、とにかく『生きた情報』を集めることです。借りられるだけのフィンを借りて使ってみて下さい。初対面の人でも、その人のフィンに関して興味深げに声を掛ければ、結構貸してくれるものです。そこで得た『生きた情報』(ほんの僅かな時間ですが、脚が感じた水の抵抗 等)を 一回(フルタイム)のスノーケリングやSCUBAダイビングに当て嵌め、その時 脚にかかる負担を想像してみて下さい。

    * フィンが硬すぎれば 息が切れ、疲れ、脚が攣ります。反対に柔らか過ぎれば、 運動量の割りに スピードが出ません[前に進みません]。

    * 脚にかかる負担を想像する際には、あらゆる負荷(うねり、潮流、対表面積増加、過重量、短距離ダッシュ 等)を必ず考慮して下さい。

 

年齢的にも体力的にも若い時期は、「移動が許されている三次元の水中世界」(ダイビングポイント)を縦横無尽に泳ぎ回る、そんな「ネクトン」を目指してほしいものです。歳をとれば、嫌でも「プランクトン」になるのですから。

 

 

(フィンの履き脱ぎ方法)

履く

  1. フットポケットの踵部分を底方向に大きく折り返します。

  2. フットポケットに足をしっかり差し込みます。

  3. 折り返したフットポケットに指先を掛け、指先で踵をなぞる様に 折か返しを戻します。

    * フットポケットに柔らかさが求められるのは、このためです。

   ストラップ・フィンも 形状は異なりますが、履き方は同じです。

脱ぐ

  1. 膝を胸に引き寄せて、フットポケット(踝辺り)に拇指を差し込みます。

    * 空いている方の手を使って 膝を抱えると良いでしょう。

  2. 差し込んだ拇指を縁に沿ってスライドさせ、踵先端まで移動させます。

  3. 拇指の背で踵をなぞる様に、フットポケットをずらします。

    * 片手を足首や脛に添える[片手で足首や脛を支える]と、フットポケットをずらし易くなります。

  4. フットポケットから足を抜きます。

    * 片手を足首や脛に添える[片手で足首や脛を支える]と、フィンを外し易くなります。

   ストラップ・フィンでは、クイックリリースバックルを活用しましょう。そのためにも、購入に際しては 扱い易いものを選びましょう。

 

 

ご意見・ご質問等ございましたら、下記アドレスまでお送り下さい。

            scuba@piston-diaphragm.com