貴方はダイビングナイフを持っていますか? 購入の際に どの様な説明(使用目的・方法)を受けましたか? 購入後 使ったことがありますか?

  釣り糸やロープ、網を切るためならば、それに適した道具をBCDのポケットに入れておけば済むことです。ここでは、【ナイフの使用目的・方法】 【ダイビングに適したナイフの形状】 【ナイフの正しい装着方法】 について説明致します。

 

 

【ナイフの使用目的・方法】

 ダイビングナイフには、主に3つの使い方があります。

1. 補助推進

   参考 :「クロスカントリースキーのストック」、「氷壁登攀時のアイスピッケル」

    * ナイフの柄を逆手に握って 刃を砂に突き刺し、フィンキックに併せて その手を引き寄せて前進、これを繰り返します。(尺取虫的前進法)

        + これを効率良く実践するには 体をより水底に近づけ 尚且つ フィンで水底を蹴らない[砂を巻き上げない]泳ぎ方の修得が必要となります。

    * 通常 砂地は岩場よりも沖にあり 起伏も少ないので、潮流の影響を受け易い場所です。限られた時間や使える空気の量 等、制約の中でも安全に移動する手段として 有効です。

    * 競泳自由形(クロール)のプルの様に 手を引き寄せるだけでなく、押し出す力も利用できれば、より大きな推進力が得られます。

2. 安全静止

   参考 :「ピッケルを使っての滑落停止」

    * 潮流の速い砂地において ナイフの柄を逆手に握って 刃を砂に突き刺し、これを手掛りに安全静止を行います。

    * 潮流の速い砂地では、岩場と違って安全静止を行う手掛りとなるものがありません。ナイフが無ければ泳ぐ以外に静止する方法は無く、これでは空気や体力を余計に消費してしまいます。

3. 距離測定(ナイフストローク)

  上記『補助推進』時のストローク数(ナイフを引き寄せた回数)で移動距離を計る。

   参考 :「陸上で二地点間の距離を (総歩数×平均歩幅)で導き出す」

    * 砂地に点在する岩や飛び根、漁礁・産卵礁への確実な移動に役立ちます。

    * 1ストロークで進む距離には個人差があるので、事前にその計測を行う必要があります。

        + 25m、50mを何ストロークで移動できるかを数え、1ストローク当りの平均移動距離(ナイフストローク)を 各自で定期的に算出しておきます。因みに 私が距離100mで算出じた 1ナイフストロークは、2m/回。

    * 慣れない内は ストローク数を数えるタイミングで呼吸をしてしまいがちです。こうなると 空気の消費量が急激に増えてしまします。ご注意下さい。

4. 接近・後退、姿勢安定

  (砂地での生物観察や撮影の際、砂に刺したナイフを手掛りとする)

    * 砂を巻き上げる事無く 目標物に対して接近・後退できます。

    * 撮影に適した場所[方向](ベストアングル)は限られており、被写体や撮影環境の保全は 後続ダイバーのためにも維持すべきものです。複数の撮影者がそれを共有すべく 入れ代わる際に、砂を巻き上げる訳にはいきません。

 

  これらができないが故に 砂地に出て行かないとしたら、ダイビングポイントを満喫したとは言えず、ダイビングを半分損しています。

 

(注意)

☆ 左利きの方でも 右手でナイフを使う事をお勧めします。理由は、BCDパワーインフレーターやコンパスが 通常左手側に装備されているからです。どうしてもナイフを左手で扱いたい場合は、BCDの給排気方法やコンパスの装着方法 等に不都合の無い様、各自で工夫して下さい。

☆ 上記3項の様にナイフを使うと 刃は潰れてしまう[切れ味が失われる]ので、ナイフに切れ味が必要な時には、予備のナイフを用意・持参して下さい。

 

 

【ダイビングに適したナイフの形状】

   砂に突き刺したナイフが 十分な手掛りとなるためには、適度な刃渡りと刃幅のナイフ、女性用でも 刃渡り13?(男性用なら15?)以上が必要です。

    * どの指導団体のどのマニュアルにも、「ナイフの使い方」に関する記載は無いと思われます。だから 「果物ナイフ」が平然と売られています。これでは、ものの役には立ちません。

    * ダイブウェイズ 5インチナイフ(刃渡り13.3?、全長27.3?)、7インチナイフ(17.0?、31.0?)

  加えて 体を水底に より近づけ、尚且つ 砂を巻き上げない遊泳は必修です。

    * 体が水底から離れた状態では 腕の引き付けが生かせません。また 砂を巻き上げて泳ぐ姿は、決して美しいものではありません。

 

 

【ナイフの正しい装着方法】

  5インチナイフともなると、全長は27.3?(ホルダーの全長は約30?)。これを『利き手側の膝下内側』に、上部ストラップ(膝下)はしっかりと 下部ストラップ(足首方向)はゆったりと締め付けて ナイフホルダーを固定します。

    * 脛と脹脛とで平らになっている部分。《左図参照》

    * 膝をつく際 柄尻が邪魔にならないように、ホルダーの位置を確認・調整して下さい。

    * ナイフを膝下外側に装着するのは不利です。右[左]膝外側装着したナイフを右[左]手で取出し・収納するとは限りません。左[右]手での取出し・収納を余儀なくされた場合、膝下外側装着時は内側装着時に比べ ダイバーに大きな負担がかかります。(左図は 右膝外側装着時です)

        + 内側装着ならば、脚の動き(足首を股関節に近づける)により 簡単にナイフホルダーを引き寄せられます。

 

 

※ 銃刀法

  正しくは、銃砲刀剣類等所持取締法(昭和33年施行)。「銃砲」「刀剣類」「模造刀剣類」「刃物」の 所持と保管・携帯・運搬を規制する法律です。2007年(平成19年)12月 長崎県佐世保市のスポーツクラブで起きた猟銃乱射事件や 2008年(平成20年)6月 秋葉原でのナイフを使った通り魔殺人事件 等を切っ掛けに、改正銃刀法が 2009年(平成21年)1月5日に施行されました。

  改正以前の銃刀法は、犯罪が発生しない限り 取締の対象とはならない様な『ザル法』でした。規制を強化した改正銃刀法において  「ダイビングナイフがどのように取り扱われるか」 現在 情報を集めているのですが、警察内でも意見の統一が図れていないようで 情報が錯綜しています。

  詳細については、分かり次第 お知らせ致します。

 

  「改正銃刀法において ダイビングナイフがどの様な規制を受けるのか」について一例を挙げて お知らせ致します。

  車のトランクに 他の器材と共にダイビングナイフを積み、潜水地に向かう途中で警察の検問、職務質問を受けた とします。この場合は 『正当な理由』があるので、問題ありません。

     * 『正当な理由』とは、『通常 人の常識で理解できる正しい理由』のことです。「必要な道具を運ぶ」「購入したので 家に持ち帰る」「修理に出す」等がこれに当たります。当然の事ながら 「護身用」は 通用しません。

  但し 「車内とは言え 抜き身のまま助手席等に置いてある」「誰が見ても明らかに挙動、言動が不審」 「帰宅後 ダイビングナイフを下ろし忘れ、後日 検問、職務質問を受けた」等の場合は 拘束、科料の対象となる との事です。

  つまり、法の運用がより厳格(現実的)になりました。

     * 仮に 改正法を極めて厳格に運用した(ダイビングナイフを規制の対象とした)としても 上記『ナイフの使い方 3種』を実践していれば、砂との摩擦により 豆腐すらまともに切れない程に 刃の切れ味は失われます。因って 例え検問や職務質問を受けようとも 最早「ナイフの様な形をした金属」なので、相当の刃渡りがあろうとも 規制の対象にはなり得ません。

 

 

         ☆ ご意見・ご質問等ございましたら、下記アドレスまでお送り下さい。

                      scuba@piston-diaphragm.com