ここでは、ファーストステージで減圧された空気(中圧空気)が セカンドステージにおいて どの様にして周囲圧まで減圧されるか を説明致します。
【基本構造】
※ 《左図》は、一般的なセカンドステージの内部構造です。
A室 : 周囲圧室。内圧は常に周囲圧(大気圧+水圧)です。
B室 : 空気室。内圧は常に『周囲圧と同じ圧力』に維持されます。
ダイアフラム : シリコン製。容器に密着固定され、内部をA室とB室に分けています。二室間に圧力差が生じると その柔軟性を生かして、二室が同圧になる様に 一定範囲内で変形します。
デマンドレバー : ダイアフラムの動きを『てこ(梃)の原理《左図》』を用いてデマンドバルブに伝えます。
デマンドバルブ : ダウンストリーム型。内部にあるピストンは デマンドレバーに連動して開閉し、ファーストステージで減圧された空気(中圧室内の空気)の放出・遮断を行います。
* 《図B・上》下流側に開くバルブ。
ファーストステージで減圧された空気(中圧室内の空気)は、中圧ホースを通って セカンドステージに供給されます。
デマンドバルブが閉じている時《図B・下》、ピストンの上流側には『中圧室内の圧力[←]』が、下流側には『スプリングの張力[⇒]』+『B室内の圧力☆=周囲圧(大気圧+水圧)[→]』がかかっています。
* B室内の圧力☆は、ダイアフラムの働きにより 『周囲圧と同じ圧力』に維持されます。
B室内圧 | ☆
陸上(水深0m) 1気圧 |
(水深10m) 2気圧 |
(水深20m) 3気圧 |
(水深30m) 4気圧 |
中圧室内圧 |
10気圧(仮定) |
11気圧 |
12気圧 |
13気圧 |
この様に、周囲圧の増加に伴い 中圧室内の圧力(一次減圧値)が上昇しても、ピストンの上流側と下流側の圧力差は 常に一定です。
* 周囲圧の増加に伴う中圧室内の圧力の上昇が要因となり、セカンドステージがフリーフローすることはありません。
【作動原理】
※ 点線→実線 :ダイアフラムやデマンドレバーの動きを表しています。
1 マウスピースを銜えたダイバーが吸気を始めると、B室内の圧力は A室内の圧力(周囲圧)よりも低くなります。この二室の間に生じた圧力差により、ダイアフラムは B室側に移動します。
内部にあるスプリングの張力によって『中圧空気の放出』を抑えていたデマンドバルブは、ダイアフラムと連動するデマンドレバーの『梃子の原理』によって開くので、B室内に中圧空気の放出が始まります。
☆ 中圧空気が無制限に B室内に放出されたら、セカンドステージは フリーフローしてしまいます。また ダイバーの吸気量は刻々と変化しています。この様な条件・状況下で、セカンドステージは フリーフローする事無く、次の様に作動します。
▽ ダイバーの吸気に伴い、ダイアフラムは定位置よりもB室側に在るので、B室内に中圧空気を放出しています。
2 ダイバーの吸気量が増加すると 中圧空気の放出量はそれを下回るので、B室内の圧力は A室内の圧力(周囲圧)よりも低くなります。
この二室の間に生じた圧力差により ダイアフラムは更にB室側に移動するので、連動するデマンドバルブの開放は大きくなり、B室内への中圧空気nの放出量は増加します。そして A室(周囲圧)とB室が同じ圧力になると、ダイアフラムは その位置に留まります。
つまり B室内の圧力[ダイバーの吸気圧]は、『周囲圧と同じ圧力』に維持されます。
▽ ダイバーの吸気に伴い、ダイアフラムは定位置よりもB室側に在るので、B室内に中圧空気を放出しています。
3 ダイバーの吸気量が減少すると 中圧空気の放出量はそれを上回るので、B室内の圧力は A室内の圧力(周囲圧)よりも高くなります。
この二室の間に生じた圧力差により ダイアフラムは『A室』側に移動するので、連動するデマンドバルブの開放は小さくなり、B室内への中圧空気の放出量は減少します。そして A室(周囲圧)とB室が同じ圧力になると、ダイアフラムは その位置に留まります。
つまり B室内の圧力[ダイバーの吸気圧]は、『周囲圧と同じ圧力』に維持されます。
☆ 上記1〜3の動きが セカンドステージ内部で『瞬時に』行われるので、ダイバーは A室内と同し圧力(周囲圧)の空気を必要なだけ吸うことができる訳です。(勿論 フリーフローさせる事無く‥)
* 実際の『ピストンやダイアフラムの振動』は 《左図》とは異なり、極めて微細なものです。
また 『心理状態や運動量による吸気量の変化』や『個人差』についても、これら一連の動作で対応できます。
☆ 水深(周囲圧)の変化に対しては‥、
▽ ダイバーの吸気に伴い、ダイアフラムは定位置よりもB室側に在るので、B室内に中圧空気を放出しています。
4 ダイバーが深深度に移動すると、A室内の圧力(周囲圧)はB室内の圧力よりも高くなります。
この二室の間に生じた圧力差により ダイアフラムはB室側に移動するので、連動するデマンドバルブの開放は大きくなり、B室内への中圧空気の放出量は増加します。そして A室(周囲圧)とB室が同じ圧力になると、ダイアフラムは その位置に留まります。
つまり B室内の圧力[ダイバーの吸気圧]は、『周囲圧と同じ圧力』に維持されます。
▽ ダイバーの吸気に伴い、ダイアフラムは定位置よりもB室側に在るので、B室内に中圧空気を放出しています。
5 ダイバーが浅深度に移動すると、A室内の圧力(周囲圧)はB室内の圧力よりも低くなります。
この二室の間に生じた圧力差により ダイアフラムはA室側に移動するので、連動するデマンドバルブの開放は小さくなり、B室内への中圧空気の放出量は減少します。そして A室(周囲圧)とB室が同じ圧力になると、ダイアフラムは その位置に留まります。
つまり B室内の圧力[ダイバーの吸気圧]は、『周囲圧と同じ圧力』に維持されます。
6 ダイバーが吸気を止めても ダイアフラムはB室側に在るので、B室内への中圧空気の放出は続きます。しかし消費されないので B室内の圧力はA室内の圧力(周囲圧)よりも高くなります。
この二室の間に生じた圧力差により ダイアフラムはA室側に移動する[定位置に戻る]ので、連動するデマンドバルブが閉じて B室内への中圧空気の放出は止まります。
* B室内の圧力は、A室内の圧力(周囲圧)になります。
そしてダイバーの呼気は、(図にはありませんが)B室壁面にある『エクゾーストバルブ(排気弁)』から水中に排出されます。
☆ 再びダイバーが吸気を始めると‥
《図1〜5》の動きが繰り返されます。
(おまけ)
マウスピースを銜えたダイバーが吸気せずに深深度に移動すると、A室内の圧力(周囲圧)は B室内の圧力よりも高くなります。
この二室の間に生じた圧力差により ダイアフラムはB室側に移動するので、連動するデマンドバルブの開放により B室内に中圧空気が放出されます。《図a》
放出された空気により、B室内の圧力は A室内の圧力(周囲圧)より高くなります。
この二室の間に生じた圧力差により ダイアフラムはA室側に移動する[当初(ダイバーが吸気を始める前)の位置に戻る]ので、連動するデマンドバルブが閉じて B室内への中圧空気の放出は止まります。(フリーフローを起こす前に‥)《図b》
マウスピースを銜えたダイバーが吸気せずに潜降を続ける限り、この作動は連続します。
セカンドステージは ダイバーが何時吸気を始めてもよい様に、B室内の圧力を周囲圧と同じ圧力に保ちます(=ダイバーは 常に周囲圧と同じ圧力の空気を吸うことが出来ます)。
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