『気体が冷却 または 圧縮されて液体に変わる』現象を、『凝縮』または『凝結』と言います。ダイビングで使用するタンクには コンプレッサーによって高圧圧縮した空気を充填するので、その過程で凝結(空気中に含まれる水蒸気が水滴となる)が起こります。この様な状態は、コンプレッサーやタンク、レギュレーターにとって 良い環境とは言えません。そこでコンプレッサーは 取付けられている排水装置を使って 圧縮過程の空気中から水蒸気の大半を取り除いているので、タンクに充填された空気は 大気よりも明らかに乾燥しています。ダイビング中はこの通常よりも乾いた空気を吸い続けるので、特に初心者は 喉の渇きを感じます。

 

  予防法として 器材装着前やエントリー前の水分補給が挙げられますが、これには「生理現象」が伴います。スーツを脱ぐ手間、トイレの場所が遠い 等がそれを阻みます。一時期 口内(上顎)に貼り付けるキャンディー なんてものもありましたが、いつの間にか消えました。

  結局は ある程度の経験(潜水本数の増加)から成る耐性に委ねているのが現状です。

  エントリーまでの準備段階で大量の汗をかいてしまうことも、要因に挙げられます。「あれが無い」「これを忘れた」。リーダーのいない集団行動は 右往左往するばかりで、スーツを着たまま 器材を背負ったまま待たされることは当たり前‥。集団の動きと自分の準備速度を照らし合わせて、疲れない様に汗をかかない様に 予測し行動することも対処法のひとつです。

 

 

  50本程潜っているADダイバーです。最近 ダイビング後にやたらと喉が渇きます。こんなことは ダイビングを始めた頃以来、無かったことです。レギュレーターは買って2年になりますが、オーバーホールは一度もしていません。これってレギュレーターが原因?

  『Myレギュレーター』『潜水本数約50本』ということから考えられる『ダイビング後に喉が渇く』原因は 2つ。ひとつは 『セカンドステージの不具合』、もうひとつは 『ダイバー本人』です。どちらも 吸気の際に極少量の海水を吸い込み続けることで起こる喉の渇きです。

 

A セカンドステージの不具合

 ★ エグゾーストバルブに異物が付着したことによる気密不良

        ⇒十分な流水洗浄(マウスピースから水を流し込む)を行います。

 ★ セカンドステージ本体(ケース)に亀裂  (タンクの下敷き 等による破損)

        ⇒ケースの交換

 ★ ダイアフラム、マウスピースの破損

        ⇒ダイアフラム、マウスピースの交換

     * 古いレギュレーター(合成ゴム製)ならともかく 近年はシリコン製なので、これが原因である確率は かなり低いと思われます。

 

B ダイバー本人

 ★ マウスピースを正しく銜えていない

     * 質問者の「潜水経験50本」は、この症状緩和に十分な経験と言えます。にも拘らず 喉が渇くのであれば、次のことが考えられます。

   人は水中を怖がります。呼吸が出来ないからです。多くのダイバーは ある程度の経験を積むことにより、「水中における呼吸」に対する不安感や緊張感が徐々に薄れて行きます。

     * 質問者の『潜水本数約50本』は、これに当て嵌まる 十分な『経験』です。

   すると 安心感や開放感から ダイバーの口元(唇とマウスピースとの密着)は 自然と緩むので、吸気の度に極少量ですが 海水を吸い続けることとなり、喉の渇きを感じます。

マウスピースの銜え方

  1. 突起(ペグ)を軽く噛み、唇を尖らせる様にして マウスピースを口に包みます。

  2. 唇とマウスピースを密着させます。

     * 母音「お」を発音する時の口元の様に‥。

  もう一度初心に返って マウスピースを銜え直し、(ダイビング中は)バディに時折 口元を確認してもらってみては如何でしょうか。

(注意)

  『マウスピースを強く噛む』事と 『マウスピースをしっかり銜える』事は、同義ではありません。皆さんもやってみると分かるのですが、人は誰しも 歯を食い縛ると、口元が自然と横に開きます。マウスピースを銜えた状態ならば、唇とマウスピースとの密着が緩んでしまい、極少量ですが 海水を吸い続ける原因となります。

    * 同様の事が 『スノーケルを使っての呼吸』にも当て嵌まります。

    * 『初心者は ダイビング後に喉が渇く』という事例についても、『タンク内の空気が乾燥しているから』ではなく、実は インストラクターの不適切な指導・監督による『マウスピースの不適切な銜え方(強く噛む)』が原因である場合が 少なからず存在すると思われます。

 

 

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            scuba@piston-diaphragm.com