「何故 こんな事を‥」と お思いでしょうが、器材のメンテナンス(維持、管理)としては とても重要なことです。

 タンクバルブを『お茶の入ったペットボトルのキャップを捻る時の様に』 いきなり開けると、タンクに充填された200気圧の高圧空気がファーストステージ内部へ一気に流れ込んでしまいます。

    * ファーストステージ : レギュレーターの一次減圧部 (タンクバルブ取付部)

    * 右のイラストは、ピストン式ファーストステージの断面略図です。

 これでは ファーストステージの高圧室・気密用O-リングの破損リスクを高めてしまいます。(略図上の赤丸で囲んだ部分)

    * 以前(高圧ホースがスチールラジアル構造だった時代)は 『高圧ホースのメンテナンス』という意味合いもありましたが、高圧ホースの改良(スチールラジアル廃止)に伴い、今では 『ファーストステージのメンテナンス』のためと言えます。

    * 高圧空気は O-リングを破断するのではなく、表面に まるで刃物でなぞった様な 浅くて細長い傷を付けます。こうなると分解してO-リングを交換する以外にエア漏れを止める方法はありません。

 

 

『タンクバルブの開け方』

(炭酸飲料の入ったペットボトルは 中味が噴き出さない様にと、キャップをゆっくり開けます。これと同じで‥) タンクバルブを 始めにゆっくり開けて、ファーストステージへの圧縮空気流入音 または 圧縮空気流入による 高圧ホースの『張り』を確認します。

素早く全開します。

1/8〜1/4回転(45〜90度)戻します[閉めます]。

    * タンクバルブを全開状態にしておくと、万が一 バルブの開放方向に何らかの力(器材取扱中にぶつける 等)が加わった場合には、バルブの固着・折損を招きます。こうなると セカンドステージ・パージボタンを使って タンク内の高圧空気を全て排出しない限り、タンクバルブからレギュレーターを取り外すことはできません。

        * 力任せにヨークスクリューを回せば、ねじ部が潰れて 最悪交換ということにも成りかねなせん。

        * タンクバルブに関しては、所有者から修理代の請求があるやも‥。

時々 タンクバルブの開放方向が判らなくなるという方もいらっしゃいます。そんな時は、いつも ペットボトルのキャップを開ける方の手をタンクバルブに添えて回す(開ける)と良いでしょう。

    * 当然のことながら 上記方法にて‥。

 タンクバルブは、セッティング後のタンク残圧確認 および 各器材の作動確認が完了したら、速やかに全閉して残圧計(エアモニター)表示をゼロにしておきます。

  《たまに見かける光景ですが‥》

     セッティング後 タンク内圧(200)を確認してタンクバルブを閉めました。ブリーフィング後にSCUBAを装着。エアモニターは200を表示しているので、タンクバルブは開いているものと思い込んでいます。乗船してポイントに到着。ブルワーク[舷牆]に腰掛けてBCDにパワーインフレーションの後、バックロールエントリー。ここでレギュレーター内の空気圧がゼロになり、当人は水中[水面]で大騒ぎ‥。

  タンクバルブは 外観から開閉状態を確認することはできないので、『必要な時に開け、終わったら必ず閉めて (パージボタンやパワーインフレター等を使って)エアモニターの表示をゼロにする』習慣をつけましょう。『エアモニター表示ゼロ→全閉』の関連付けによって 『タンクバルブの開け忘れ』は解消できます。

    * 『全閉』は、『セカンドステージ・パージボタンの誤作動から起こる タンク内圧減少』の防止にも役立ちます。

    * チームリーダーがエアチェックのサインを出すので 空気の管理はリーダーがするものと思っているダイバーがいますが、これは大きな間違いです。空気は自己管理するものであって、リーダーは単に 潜水計画遂行のための情報を集めているに過ぎません。OWダイバーが100人いれば、その内の何人かは必ずチームリーダーやDM、インストラクターになります。言わば チームリーダーやDM、インストラクターは、OWダイバーの成れの果てです。自らを管理できないダイバーが、上級者になった途端に 自身やバディ、チームを管理できる様になる訳がありません。これでは『出来損ないの上級ダイバー』になってしまします。今から 事あるごと(様々な行動の前後)にエアチェックを行う習慣をつけましょう。

  『タンク内圧の確認は、エアモニター(残圧計)を見ながら セカンドスレージでの呼吸と共に行う』という習慣付けができていれば、こんな「ふざけたこと」は 決して起こりません。

    * 『 エアモニター表示200気圧、タンクバルブ全閉』の状態でも、セカンドステージで数回呼吸しながらエアチェックを行えは、エアモニターの表示の急激な低下により 『タンクバルブ全閉』に必ず気付きます。

 

(余談 その1)

  以前は「タンクバルブの開放(開け方)」を「水道蛇口のハンドル」に置き換えて説明していましたが、そのハンドルノ形状が大きく様変わり(バンドル無しも珍しくなくなり)ましたので、今は専ら「ペットボトルのキャップ」を例えに使っています。

(余談 その2)

  あるバディチームのリーダーをしていた時です。潜降してから5分後、水深12mのところで チームの1人がエアモニターを片手にすっ飛んで来ました。見ると残圧は「50気圧」でした。この間、パニックを起こした訳でもなく、激しい動きしていません。

  原因は、不完全はタンクバルブの開放(バルブが僅かしか開いていなかった)によるものです。「器材セッティング後のタンクバルブ全閉が不十分で、器材装着時にタンクバルブを開け忘れた」のか、または「全開していたタンクバルブの開放が不十分だった」のかは分かりませんが、何れにせよ 水深、ダイバーの給気量、タンクバルブの開き具合が 極めて絶妙なバランスにあったため、エアモニターの指針が「50気圧」を微動だにせず示していた 非常に珍しい事例でした。

  タンクバルブを全開にし、本人も納得したので、そのままダイビングを続けました。

    * タンクバルブの不完全開放により 残圧が低く表示される[指針が振れる)]例として、深深度、シェアエア 等が挙げられます。

 

 

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