貴方のレギュレーターには シェアエアセカンドステージ(オクトパス、セーフセカンド)が付いていますか? それは左右どちら側ですか? 使ったことがありますか? それは何時如何なる場合でしたか?

   貴方は、シェアエアセカンドステージの真の使用目的をご存知ですか?

 

 

【目的】

  『シェアエアセカンドステージ(オクトパス)の使用目的は?』との問いに対して ダイビングショップの店員やインストラクター、また多くのダイバーが‥、

    A マイタンクの空気が無くなった(エア切れ)時にバディから空気を貰うため

    B プライマリーセナンドステージが故障した際の予備器材

 と答える様ですが、これは間違いです。正しくは『潜水計画を遂行するために 空気を効率良く使う(再分配する)こと』です。

 A エア切れ』に対する反証

   SCUBAダイビングとは 空気が無ければ生きられない「人間」が 水中世界を遊泳する娯楽であり、本来 ダイバーとはそれに必要な器材を準備し 講習を修了した証である「Cカード」を持っている人のことです。

     * 「水中世界での空気管理」という 「自らの命に係わること」を無視できるダイバーがいるとしたら、その人は ダイビングの欠格者か自殺志願者です。シェアエアセカンドステージは そんな人に配慮した器材ではありません。

   「エア切れを想定する」ということは、器材(エアモニター)や講習(エアチェック、バディチェック、潜水計画)を、また ダイビングスクールやショップ、インストラクターにとっては 自身の存在理由を、それぞれ否定することと同義です。

 『B 予備器材』に対する反証

   「セカンドステージには予備が必要」と主張することはファーストステージにも予備を、即ち「酸素を多く含んだ血液を送り出す心臓が2つ必要」と同義です。しかし 市販のレギュレーターの中で その様な構造になっているのは、DIVEWAYSのFSR117 ただ1器種のみです。因って これ以外のレギュレーターで潜る際には 2台のレギュレーターをタンクに装着しない限り、この主張は成立しません。

     * レギュレーターはその構造上、以下の場合を除き 空気の供給が止まることはまずありません。1.タンクバルブの開け忘れ。2.タンク残圧ゼロ。3.供給中圧ホースの破断。4.ダイバーの呼吸停止。5.破損、変形する程の衝撃(外力)が加わった場合。

10L200気圧タンクには 約2000L(ドラム缶10本相当)の空気が入っています。浮上開始時の残圧50気圧(500L)を差し引けば、ダイビングの最小単位1バディ(2人)が使える空気の量は 3000L。シェアエアセカンドステージがあれば、空気消費率の異なる1バディは 潜水計画を立案・遂行する上で、3000Lの空気を再分配することが可能になります。

    * 複数バディからなるチームであれば、その限られた空気量をバディ間に拘らず チーム内で再分配することも可能です。

(注意)

  ダイビングの最小単位『バディ』、その集合体『チーム』を組む条件のひとつとして、「同等の器材装備」が挙げられます。因って バディ、チームの全員が同等のシェアエアセカンドステージを装備していない限り 空気の再分配は許されません。

 

  シェアエアセカンドステージの真の目的が その名の通り「空気の分配」と知っていても、それを行う『時期』を正しく理解しているダイバーは皆無と言えます。

  その時期とは、『(浮上を開始する時にはバディ[チーム全員]が残圧50気圧以上になる様に)潜降完了後からダイビング中盤にかけてシェアエアを行う』ことです。

    * シェアエアは供給者のみならず受給者にも かなりの肉体的・精神的負荷をかけます。更に ダイビング後半は誰もが疲労しているので、供給者・受給者共に空気消費量が予想を大きく上回る場合があります。中性浮力がとれない場合は尚更です。

  更に細かい時期に関しては、潜水計画立案時に詳細を詰めます。つまり シェアエアとは、突発的行動ではなく 『予定行動』なのです。

(注意)

  シェアエアの運用は、潜水計画の立案・遂行に際して 『空気消費量のみ』が課題になった場合に限られます。遊泳力のない初心者や明らかに技量の劣るダイバーを 無理な潜水計画に参加させるための手段として用いれば、必ずや事故を誘発します。

 

 

【中圧ホースの取付位置】

  上記【目的】に適したシェアエアセカンドステージの取付位置とは、(プライマリーとは反対側の)『左側』です。

  詳しくは、メンテマンス(器材の維持・管理)内

             『中圧・高圧ホースの取付位置』 をご覧下さい。

 

 

【中圧ホースの長さ】

  シェアエアを行いながら水中を移動するバディには、活動が制限されながらもある程度の自由が得られる 最短にして最適な中圧ホースの長さが必要です。通常 プライマリーセカンドステージの中圧ホースの長さは、約72?前後ですが、シェアエアセカンドステージの中圧ホースの長さは 約90?前後です。この長さは、バディが相対もしくは並行するための自由度を確保する上で欠かせません。

    * シェアエア中、受給者は 供給者のBCD左アームホールに右手を掛けることで 安定受給を図ります。そして並行する際に、その右肘を伸ばした[ある程度 体を離した]状態でも 安定受給できる長さが中圧ホースには必要なのです。

    * パワーインフレーター一体型オクトパスでは 供給者がこれを使用し、プライマリー(供給者が使用していた)セカンドステージ(ホースの長さは約72?)を受給者に渡すので、バディ間の自由度は かなり制限されます。また プライマリーセカンドステージを上下反転させてバディに与える事で バディとの相対・並行も可能とはなりますが、受給者が上下反転されたセカンドステージのクリア方法を正しく理解しているとは限りません。陸上で一度レクチャーした程度で シェアエアがスムーズに行えると考えるのは あまりにも危険です。

        + 上下反転したセカンドステージは、ただパージボタンを押すだけでは水を完全に排出することはできず、むせてパニックを起こす虞もあります。(本来は 別のクリア方法を行います)

 

 

【保持】

  長さ 約90?の中圧ホースを有するシェアエアセカンドステージですから、当然 使用時以外は 保護、誤作動防止の点からも『保持』しておく必要があります。

    * ホースが長い故に ぶつける、引っ掛ける、水底を引き摺った挙句 異物が入り込み それを使ったバディがパニックになった では困ります。

  詳しくは、メンテマンス(器材の維持・管理)内

             『シェアエア・セカンドステージの保持』 をご覧下さい。

 

 

【管理】

  シェアエアセカンドステージは「所有者の持物」ではありますが、バディ(受給者)のため、自分(供給者)のため、延いては チームの潜水計画を遂行するために装備している器材です。因って陸上は勿論 水中における作動状況の確認は、バディ(供給者、受給者)双方に課せられるものです。

    * シェアエアセカンドステージに調整機能が付いている場合は、エアチェック(作動確認)の際に 受給者自身の好みに応じて調整しておきましょう。

 

 

(注意)

  最後に、シェアエアの『ぶっつけ本番』は厳禁です。ダイビング後の残ったタンク圧を利用した遊びの一環として、好条件の揃った浅い水域での複数回のトレーニングを完了したバディが、熟知したダイビングポイントにおいて 潜水計画に基づき実践することから始めて下さい。併せて中性浮力のトレーニングもお忘れなく。

 

 

 

ご意見・ご質問等ございましたら、下記アドレスまでお送り下さい。

            scuba@piston-diaphragm.com