比較的経験の浅いダイバーから、「久しぶりだと なかなか沈まない」 「1本目は上手くできたのに 2本目は‥」といった話をよく聞きます。上手く潜降できない・潜れない理由は、以下のように分類できます。

 

  A 浮力 

      既存浮力    1 ウエイト不足

      残存浮力    2 BCDの排気不全

                  3 ドライスーツの排気不全

      発生浮力    4 フィンキック

                         5 呼吸肺活量

  B スクイーズ

 

    * 既存・残存・発生の各浮力は、各指導団体編纂のマニュアルや各情報誌 等で使われていない 本項説明用語です。

  ここでは、潜降の妨げとなる『様々な浮力』について説明致します。

 

  浮力とは‥

    * ここでは 水以外の「ダイバーを浮かそうとする力」も浮力と表現しています。

 

 

鬼存浮力

   エントリー前のウエイト調整において 解消できなかった浮力

1 ウエイト不足

  ★ 以下の理由により 潜降に要する装着ウエイト量が足りない。

 ★ スカリング(両手で水を掻く)やヘッドファーストを行わないと 潜降できない状態にある。

 ★ 携帯物が受けるる浮力を考慮していない。

    * 水中では全ての物体が体積に応じた浮力を受けます。物体の自重が浮力を下回れば その物体は浮きます(=携帯するダイバーも浮く)。事前にその浮き沈みを確認して、装着ウエイト量を調整します。 (ビデオ、カメラ)

    * 長大物は例え沈み易いものでも、大きな水の抵抗が潜降の妨げになるので 適度なウエイト増量が必要です。

 ★ 携帯物(カメラ、ビデオ、ライト 等)を手に持っている。

    * スカリングやヘッドファースト等の「沈む力を得るための動作」が大幅に制限されるため、潜降が難しくなります。

    * 経験の浅いダイバーは 両手を使ってバランスをとることが多く、携帯物を持てば その動きが制限されて上手く潜降できないことも。

 ★ ドライスーツ・インナーウエアを変更した。

    * 素材が厚くなれば、スーツに内包される空気量が増えて 浮力が増します。

 ★ その時期・水域の水温に応じて プロテクションシステム(環境に応じた保護スーツ)を変更した。(衣替え、新調 等)。

    * スーツの種類、素材の厚さに伴い スーツの総体積が増えた場合は、ウエイトを増やします。

    * 新規(同型・同素材)購入後の1本目

       + 多数回使用(加圧)されたスーツは新品に比べ 素材(気泡)が圧縮されている(総体積が減少)ので、新品よりも浮力が小さい(装着ウエイト量がより少ない)。ログ等からウエイト量を再確認して 調整します。

       + 当初に比べて装着ウエイト量が減ったのは「経験増加・技能向上によるもの」との思い違いに注意。

    * 前回と異なるレンタルスーツを着用している。(浮力の差)

    * フードやベスト、グローブの着用有無・材質変更もウエイト調整の対象です。

       + グローブ : ネオプレーン製は浮力を有します。

 ★ 普段 スチールタンクで潜っているダイバーがアルミタンクの使用に際して 双方のタンク重量(刻印:W〜)を単純比較し、その差分 ウエイトを減らした場合。

    * タンク重量の差は、浮力の差(ウエイトの増減量)ではありません。

     参照 : 『スチールタンクとアルミタンク』

 ★ 体脂肪の増加。

 ★ (海外)2ポンド(約900グラム)×個数 によるウエイト総重量の不足。

    * 「1個につき僅か100グラム、ワンピースでの装着ウエイトの数からすればj 大して問題ない」とも思えるが、多くの場合 アルミタンク(上記参照)との併用となるので、無視できないことが多い。

 ★ 新規購入器材の材質が旧器材と異なる。器材の着け忘れ。

    * 材質が スチール、真鍮製から チタン、アルミニウム、カーボンファイバー製に替わる[重量軽減される]と、ウエイトを増量しない限り ダイバーは受ける浮力を解消できません。

     参照 : 『ダイバーが装着するウエイト量』

 

 

胸賃孤睥

   潜降動作が不完全なため、解消できる筈が残ってしまった浮力

2 BCDの排気不全

  ★ 以下の理由により BCDから空気を完全に排気できず、浮力が残存する。

 ★ 潜降に適した姿勢(主に水面直立姿勢)を維持できない。

    * ウエイトの前後・左右のバランスや装着方法が不適切。

    * 器材のトータルバランス(重心)が不安定。

       + タンク&BCDと ウエイト(鉛玉)の取付位置とのバランスが悪い。

       + 注意: 市販BCDの全てが 水面直立浮遊に適したバランスを有しているとは限らない。(バックフロートタイプ)

 ★ 姿勢に応じた排気方法を修得[理解]していない。

    * 手抜き講習(インチキラクター)、ブランクダイバー。

    * 毎回 排気方法の異なる(不慣れな)レンタル器材を使用している。

 ★ BCDの装着が不完全(体にフィットしていない)なので、体を各排気方法に適した姿勢に移行しても BCDが連動しない。

    * BCDのウエストベルト、各調整ベルトの締め付けが不十分。

    * サイズが不適格(大き過ぎる)。

 ★ BCDの構造的欠陥。

    * BCDの左肩前部にある ベルトを使ってインフレーターホースを固定すると、潜降時 インフレーターを頭上に差し上げての排気を行う際には ホースがJ字状になり、BCD肩部に空気が残ってしまう。

       + 姿勢が前傾している場合は、残気量が大きい。

    * ある種のBCDには インフレーター肩部(BCDとの接続部)から排気できるタイプもあるが、「適切に作動しない(動きが悪い)」「その存在を知らない」等して適切な利用がなされていない。

       + パワーインフレーター部と左肩排気バルブがワイヤーで繋がっているタイプは、これを引くことにより バルブが開きます。このバルブ・スプリングの張力が強すぎると 容易に排気が出来ず、そのまま使用を続けると インフレーターとBCDとの接続部に大きな負荷がかかり、結果 「破損(エア漏れ)」「インフレーターがBCDから脱落した」等の例もあります。

  水中では BCD内に送られた空気は浮力を受け、BCDの中で 絶えず水面に近い方へと移動します。これを理解した上で 『意図して空気を排気バルブ付近に集める』或いは『空気が集まっている場所を察して それに応じた排気バルブを選択する』ことが出来なければ、的確な排気はできません。

  ダイビング終了時、BCDに多量の海水が入っている場合があります。これは、『どこに空気が溜まっているか分からない』『上手く空気を集められない』『排気音が聞こえない』等して 必要以上に排気バルブを開けていたことによる海水の大量流入です。BCDの装着状況、的確な排気バルブの選択、水中での姿勢制御、排気音を聞ける余裕がある 等により、その量には差が出ます。(=技量差)

    * こまめに浮力コントロール(BCDの給排気)を行わなければ 当然海水流入は起きないので、そういうダイバーは対象外です。

 

3 ドライスーツの排気不全

  ★ 以下の理由により ドライスーツから空気を十分に排気できず、浮力が残存する。

 ★ 手動排気バルブの不適切な取扱。

    * ドライスーツ着用後にしゃがむ等してスーツ内の空気を排出している光景を目にしますが、この様な方法ではスーツ内の空気を十分に排気することは出来ません。エントリー後の水面では水圧がスーツ全体に満遍なく作用するので、この時 バルブを操作して排気を完了します。

 ★ 自動排気バルブの排気量調整を解除(FULL AUTOに)していない。

 ★ 適切な排気姿勢を維持できない[理解・体得していない]。

    * 排気バルブは左図赤丸の位置(通称 「ちからこぶ」の位置)にある理由、それは ダイバーが『BCD内の空気をインフレーターホース経由で排気する動作』(直立姿勢で左手を頭上に差し上げる動作)の際に 排気バルブが水面方向を向く様に考慮した、つまり 2つの排気動作の連携を図るためです。

       + 手動式排気バルグでは、この時にボタンを押して 連携排気を行います。

 ★ 外観は自動排気バルブだが、内部にその機能が内臓されていない偽物。

    * ユーザーは表示通りに操作したので 排気不全が起きた。

 

 

携生浮力

   エントリー後 あるいは潜降[潜行]動作時に、自らが生み出した浮力

4 フィンキック

  ★ 以下の理由により 過分に動かした足(フィン)が水を捉え、浮く力が働く。

 ★ OW講習において 『水面での安全確保(BCDへの十分な給気による浮力確保)』が習慣付けされておらず、足らない浮力を得ようとフィンキックをする内に これが癖となり、結果 潜降[潜行]時にもフィンキックが止まらない。

    * BCDの構造上の欠陥

       + 浮力を得るための十分な給気を行うと、本体が内側(ダイバー側)に過分に膨れて ダイバーに不快感を与えてしまうBCD。

    * 販売しているBCDの水面直立浮遊時のバランス不良を隠すために、講習中は敢えて十分な浮力が得られるまでBCDを膨らまさせないインストラクター。

 ★ 潜降に適した姿勢(主に直立姿勢)を維持できず、これを補正しようと‥。

    * 前後のバランスが崩れた器材(タンク&BCD)

       + タンクに対するBCD取付位置(高さ)の不良

    * 前後・左右のバランスが大きく崩れたウエイトベルト

    * ウエイトの装着方法が不完全

       + ベルトの締め付けか緩く、エントリー後にズレた(回ってしまった)。

    * BCDの装着が不完全(体にフィットしていない)。

       + 適切な潜降姿勢を取ろうとも BCDがそれに連動せず、これを補正しようと フィンキック‥。

    * 器材(タンク&BCD、ウエイト)のトータルバランスが悪い。

       + タンク&BCDと ウエイト(鉛玉)の取付位置とのバランスが悪い。

    * 日頃から潜降時 無意識に両腕でバランスをとっているダイバーは、携帯物によって その動きが大幅に制限される。

       + ビデオやカメラ、ナイトダイビングにおける水中ライト 等。

 ★ 不安要素や無自覚の恐怖心、ストレス 等から 無意識の内に 潜降[潜行]を拒否して 立ち泳ぎを始めてしまう。

    * 詳細については、下記 『5 呼吸(肺活量) 心理的要素』 参照。

 ★ 水面直立浮遊姿勢では フィン先は前を向いている。この状態から潜降を開始するとフィン裏にかかる水の抵抗により 両足が前方に流れ、これを補正しようとフィンキック‥。

 

5 呼吸(肺活量)

  ★ 以下の理由により 不安感や恐怖心、ストレス 等から浅い呼吸(肺の残気量が高まる)が続き、浮力が発生する。

 ★ 知識不足

    * 「深呼吸の基本は、まず大きく息を吐くこと」

    * レギュレーターを信用していない・できない。(呼吸に対する不安感)

    * 各種潜水障害に対する恐れ。

    * 陸上における暑さ・寒さ対策[潜水計画]の不備。(⇒ストレス)

 ★ 経験・技術不足

    * 各種ダイビング(ナイト、ボート等)、不慣れなことをする 等。

    * 携帯物(水中ライト、ビデオ、カメラ、その他)の保持・取扱。

    * 海況(うねり、潮流、濁り)への対応。

    * 器材(新規・レンタルのドライスーツ、BCD 等)の取扱。

 ★ 心理的要素

    * 水が怖く、息を吐ききれない。

       + 深層心理(水なれは ダイビング知識・技術、水泳能力とは別物)

    * 初挑戦・初対面、不慣れなことを行う際に生じる緊張感・ストレス。

       + 潜水ポイントや海況(うねり、潮流、濁り)、リーダー拝命。

       + 各種ダイビング(ナイト、ボート等)

       + 携帯物(水中ライト、ビデオ、カメラ、その他)

       + バディ、チーム、リーダーとの信頼関係。

    * 時間に余裕が無く 行動を急かされたため、平常心を失っている。

       + 潜水計画の不備

       + 各種トラブルの発生

 

確かに 上手く潜降できないのは本人に起因するものですが、その元凶は適切な講習を受けていない(知らない、やったことがない)・受けられないことによるものです。残念ながら 現在行われている各種講習に この様なチェック機能のあるものは極めて稀、出会うことは難しいと思います。自主トレの際にお役立て下さい。

 

 

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            scuba@piston-diaphragm.com