【洗浄】

     (その前に‥)

      タンクから取外したレギュレーター(ファーストステージ)に、タンクの圧縮空気を『長い間吹きつける』光景をよく目にします。そもそも何故 これを行う必要があるのでしょうか?

 圧縮空気を吹きつける目的は、ダストキャップを取り付けるにあたり、《左図赤丸》の周辺部に付着している水分(塩分)を取り除くためです。しかしながら この部分はタンクバルブとの接続面(気密用O-リング)とほぼ同じなので、水分(塩分)の付着は殆どありません。

 因って 《左図赤丸》の周辺部(極僅か) および 『ダストキャップの水密面《左図黄色面》』から水分(塩分)を取り除く事が本来の目的であり、それだけなら サッと吹きかければ済むことです。

× ダストフィルターに付着する異物を取り除くため?

    現在 アルミ製は勿論のこと、スクーバ用スチールタンク内部は錆びません。(昔は 振ると錆の移動する音がしたスチールタンクもありましたが‥) 百歩譲ってダストフィルターに異物が付着した としても、その内容(正体)も確認せずに圧縮空気を吹きつければ かえってダストフィルターに異物を押し込むことにもなりかねません。

× レギュレーター(ファーストステージ)から少しでも塩分を取り除くため?

    塩分は、水洗いしない限り取り除けません。「流水洗浄後に圧縮空気をふきつける」のでなければ この理屈は通用しません。

 これらの事からも 「2秒以上の吹きつけ」は、ただ喧しいだけで無駄な行為です。

 

 ダイビング終了後の器材洗浄は メンテナンス(維持・管理)の上で大変重要です。しかし 全てのダイビングポイントが 特定の時間に集中するダイバーに対応できる洗浄施設を完備している訳ではありません。因って限られた設備の中で 短時間に効果的な洗浄を行うことが求められます。

 器材に付着した塩分は、短時間の水槽浸け置きで、大幅に軽減されます。長時間の浸け置きは 施設の有効利用を損ないます。自宅で行いましょう。

 

 プライマリー(所有者使用)セカンドステージ内部には ダイビング中の呼気により 唾液が入ります。水槽浸け置きのみて これを取り除くことはできません。

    * 実際 ある程度使用したセカンドステージの内部には 異物がこびりついており、時には異臭を放つものまであります。

        + 唾液(=口内細菌)+富栄養化海水

 

 セカンドステージ内部の流水洗浄は有効です。しかし陸上での 2秒以上のパージボタン・ブローは、うるさいだけで 大した効果は望めません。

    * 放出された圧縮空気の大半はマウスピース方向に流れるので、内部を浄化する作用は小さいのです。

 パージボタン・ブローを用いて セカンドステージ内部の浄化を図るのであれば‥

(時間と余裕のある エキジット前の水面限定で‥)

   セカンドステージを左図のように海水に浸けます。

   マウスピースを掌で塞ぎ、2秒間パージボタン・ブローを行います。

   マウスピースを塞いでいた掌を緩めて 『B室』内に海水を入れます。

   上記を数回繰り返し行います。

圧縮空気の放出により発生する気泡と水流を利用すれば、陸上で行うブローよりも浄化効果が得られます。但し 海水中で行っているので、後に水道水での洗浄を必ず行って下さい。

(注意)

  この方法は『陸上でのパージボタン・ブロー』よりも効果的ですが、これにより オーバーホールが不要になる訳ではありません。

 

参考 1

  今も尚 多くのダイバーが、水底にシェアエア・セカンドステージ(オクトパス、セーフティセカンド)を引き摺りながら潜っています。オーバーホールを行うと 中からは 砂、珊瑚や海藻のかけら 等が結構出てきます。

    * シェアエアの際に こんなセカンドステージを渡されたら、バディがパニックを起こさないとも限りません。

  異物の浸入を防ぐには、セーフティプラグ(オクトパスリテーナー)の使用が有効です。詳しくは、メンテナンス(器材の維持・管理)内

            『シェアエア・セカンドステージの保持』 をご覧下さい。

参考 2

   ダストキャップをせずにレギュレーターを水槽に浸けてしまった場合‥。

    詳しくは、メンテナンス(器材の維持・管理)内

            『高圧ホース』 をご覧下さい。

 

 

【時機】

 オーバーホールの『時期・時季』については、個々の「オーバーホールに対する考え方」や「金銭負担」、「月間・年間の潜水本数」 等により様々ですので、ここでは『時機』について提案させて頂きます。

 その提案とは、『海外[リゾート]ツアー終了後』にオーバーホールを行う というものです。その理由とは、以下の通りです。

  ★ 海外(熱帯・亜熱帯地域)は高温につき 日本国内よりも塩の結晶化が早く、

    内部に付着し易い。

  ★ 海外(熱帯・亜熱帯地域)の珊瑚砂は粒子が細かく、細部に混入し易い。

  ★ 海外は国内に比べ 水利条件が劣る。

     * 洗浄水確保の難しさもありますが、現地の人々に対する(貴重な水への)配慮が不可欠と考えます。

     * 洗浄水、水槽水が真水(きれいな水)とは限りません。

  ★ リゾートでの限られた時間を効率良く使う

     * 費用対効果。折角の海外ツアー、煩わしさを省き 大いに楽しみたい。

     * メッシュバッグごと水槽に浸け、日陰に置く。

 洗浄不良、異物の付着・混入もツアー後のオーバーホールで解消できます。

 

 

ご意見・ご質問等ございましたら、下記アドレス宛にお送り下さい。

            scuba@piston-diaphragm.com